大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)5889号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>を総合すると次のような事実を認定することができる。

(一) 本件事故現場は、深谷市方面より高崎市方面にほぼ東西に通ずる巾員約九米の国道一七号線と、本庄市大字都島方面から同市小島方面にほぼ南北に通じる道路との変型交差点であり、右国道は、コンクリートで舗装され、歩車道の区別がなく、信号機の設備はないこと、事故現場附近の右国道はほぼ直線をなし、見通しは良好であること。

(二) 本件事故当時被告藍原は、毎時少くとも四〇粁の速度で右国道を深谷市方面より事故現場に向つて進行中約五〇米前方に自転車を押して歩行横断中の訴外松本とこれに続く、訴外源蔵を認めたが単に警音器を鳴らしただけでそのまま進行し、さらに歩行者の背後を通過できると考えてセンターラインを越えて接近したところ、訴外源蔵が後退したため直前で急制動をかけたが及ばず、被告車の左側前部フエンダーの附近を訴外源蔵に接触させ、よつて前記のように同訴外人が死亡するに至つたものであること。

右認定事実からすれば、訴外源蔵は、訴外松本に続いて右国道を横断しようとして道路中央附近まで来たところ、近距離を高速で進行中の被告車を認め、危険を感じて後退したものと認めるほかはない。本件の場合は、結果的にはそのまま横断してしまつた方が安全であつたことにはなるが、右のような場合歩行者としては高速で進行する自動車前面に出るよりは後退する方が安全であると考える方がむしろ通常でありしたがつてこの点に被害者の過失があるとする訳にはいかない。尤も<証拠>によると訴外源蔵は、事故当日の昼頃から前記訴外松本外一名と飲酒し、或程度酩酊していたものと認められる。しかし、訴外源蔵が本件事故当時、飲酒の上酩酊していたにしてもその行動において非難すべき点のない以上、過失があるとする訳にはいかないことは当然であり、本件全証拠によるも、事故当時の訴外源蔵の行動に被害者の過失としてしんしやくするに値するような不注意な行動があつたものと認めることはできない。よつて、被告等の過失相殺の主張を排斥すべきである。(茅沼英一)

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